Songs and Colors

歌うように軽やかに、様々な色を身にまとって。

昔取った何とやら

「手に職を付けたいんです」
確かに私は、就活の面接でこの言葉をよく発していた。
そんな気持ちなど毛頭ないとは言わないが、ほとんど信じていなかったというのに。



バブルがはじけた直後の就活は、何の資格もない文系女子大生にとって易しい道のりではなかった。
友人たちの多くは教師や公務員を目指していたし、都内から少し離れた国立大の就職課など、あって無きがごとしの状態だし、パソコン通信はあってもインターネットはまだ存在せず、1人で情報を収集するというのは結構大変だったような気がする。
まぁ今のご時世の方がよっぽど厳しい状況だけれど、当時は男女雇用機会均等法が施行されていたとは言え、明らかに男女差別は続いていたので、資料請求しても資料が送られてこないなんて当たり前だった。


「結婚しても仕事は続けますか」「一人暮らしですか」「お父さんはどんな仕事をしていますか」
多分こんなこと、男子学生には聞いたりしないと思う。
その度に「男並みに働けます」「男性には負けません」と言わなければならないのかと思った。
確かに何の目標もなくて、その会社に入ってどんな仕事をするかなんて想像もできないのに「御社に興味がありまして…」なんて平気で言ってたんだから、仕方ないんだろうけど。


そんな訳で、必然的に「入れそうな業界・会社」というのを探すようになっていき。
どの会社でも何の仕事をするんだか想像できないんだったら、新しい業界なんて人手が足らなさそうで良いんじゃないか…という理由だけで、IT業界ほぼ1本に絞り込んだ。
更に、何の仕事してるんだか分からない大企業より、何かに特化している中小企業の方が分かりやすいという理由だけで、とにかく資料を集めて面接に行きまくった。


言っておくが、私は「文系女子」である。
何をおいても数学が嫌い、嫌いというより理解したくもない、という人間である。
数学の教師に向かって「足し算、引き算、掛け算、割り算以外に、人生に必要な数学ってあるんですか」と、本気で文句を言った人間である。


ただ、今でもそうだが、私は新し物好きなのだ。
清書するのが面倒だ(コピー機に並ぶのも面倒だ)という理由で、10万円以上もする高機能ワープロを購入し、卒論を仕上げた。
子供の頃からタイプライターへの憧れはあったので、今でもキーボードは大好きだ。
だから、この時点で方向性は決まっていた、と言えなくもないのだが。


気が付いたら、私はプログラマになっていた。
とは言え、入社当初から落ちこぼれ街道まっしぐらである。
新入社員研修で初めて習ったプログラム言語「アセンブラ」は、未だに意味が分からない…と思う(笑)


入社して1年も経たないうちに「3年経ったら辞めよう」と思うようになった。
何故3年かと言えば、退職金がもらえるからである。
そして、こんな私でも3年経てばSEと呼ばれるまでにはなっていたが、自分には全く向いてない、早く辞めたい…そんなことばかり考えていた。


それでも、石の上に3年…なのである。
実際は、少しブランクを挟んで10年くらい似たようなことをやっていた。


SE、プログラマ的な職種から遠ざかって7年以上経つが、何だかんだ言ってそのテの業務はちょこちょこやるハメに陥っている。
「もうできませんから」と言っても、やっぱりフツーの人よりはできるのだ(笑)
全く知らない言語でも、プログラムの基本的な組み方や考え方が大きく異なる訳ではないので、コツさえ掴めれば少し分かってくる。
ただ、本当に面倒くさいので、本当にやりたくない。
あぁ何度、私は「やりたくないんです」と言ってるんだろう(笑)


とか言いつつ、今の仕事もプログラマ的な要素が多い。
でもプログラマだと時給が上がっちゃうので、建前的には事務職の部類である。
まぁ、自分としてはこのくらいの比率でちょうど良いかな、と思う。
数学は今でも嫌いだけれど、組んだプログラムが自分が求めてた動作をした時の快感といったら、パズルを解いた瞬間に似ている。
そう言えば、図形の証明だけは何故か好きだったんだよな(笑)